2024年の映画

木の葉の家


昨年は事情があって50数本しか掲載していない。ほかに50年代、60年代の洋画・邦画を30本ぐらい見ているので、総計では80数本となり、いつもより20、30本少ない感じである。今年もまだどうなるか分からないが、なるべく新作を見ていきたい、とは思っている。

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1 枯れ葉(T)

カウリスマキの久しぶりの新作、別に彼の映画だから見たわけではなくて、何となく良さそうだという感覚と、女優さんアルマ・ポウスティを見たくて見た映画である。じつに古典的な撮り方をしていて、恋愛ものの王道だった“すれ違い”を露骨にやっている。それと、待ちの時間を足下の吸殻で表現するなどのベタな演出もやっている。同室の仲間に誘われカラオケに行くことに決め、鏡を覗くとそれがピカソの絵のように割れているという、これまたベタなことをやっている。それもこれも古典的な愛の様子を描くための企みであって、じつに相応しいことである。主人公の女性が貰い受けた保護犬は名前がチャップリンカウリスマキの尊敬する監督の一人である。ぼくはカウリスマキの作を2作見ているはずだが、「マッチ工場の少女」のほかに何だったかが思い出せない。

 

2 市子(T)

杉咲花を見たくて見た映画。過去を偽ってきた人間の過去を探っていく話。戸田彬弘監督、脚本同、上村奈帆。戸田はいろいろ映画を撮っているが、一作もひっかかってこない。

 

3  ガンバレ・ベアーズ(S)

何度見ても印象の変わらない映画である。これぞアメリカ的な、という意味である。今回、少し気づいたのは、ビッグ・モローの悪役は「カラテ・キッズ」の悪役チームのコーチに引き継がれているということである。何があっても優勝を目指すチームだが、その方針に子どもたちが離反していく、という設定をパクっている。原題はThe Bad News Bears でこれを子どもたちが唱えてゲームが始まる。「あんたらの負ける悪いニュース、それがベアーズだ」という意味である。それにしても、子役ジョディ・フォスターが大成して、子役ティータム・オニールがそうはならなかった理由は何か? といっても、ジョディがそれほど大物になったともいえないが。オニールの演技があくまで受け身である。だから、応答に微妙な間が空く。つまり下手っぴなのである。

 

4  ガール・コップス(S)

ゆるい女性刑事もの、それも義姉と義妹のコンビで、その夫あるいは兄はあくまでまぬけだが、大事なときに居合わせる能力を備えている。義姉と義妹は閑職に追われるが、そこの嫌われ所長もじつは実力を認められずおいやられた口だった。警察における女性差別をユーモラスに逆転する映画である。途中で何度かやめようと思ったが、このゆるさが韓国映画の特徴かもしれないのだ。女性刑事コンビとしては、サンドラ・ブロックの「デンジャラス・ビューティ1、2」があるが、それを援用したのか? 所長はサム・ヘランで、I can speakに出ていた。“100の顔をもつおばさん”といわれている。

 

5 リバイバル(S)

また韓国映画。死んだはずの奥さんから連絡があるが、それは時代がずれているのである。しまいにそれが合うが、けっこう見ていることができた。しかし、最後になると飽きが。悪党刑事をやった男がペ・ソンウ、何の映画だかで見ている。たしかいい人を演じていた。

 

4 眠りの地(S)

トミーリー・ジョーンズ、ジェレミー・アイアンズ。地域の葬儀社オーナーのトミーリー、保険会社の積立金が不足したために、資格停止の危機に。そこで買い手を探し、葬儀界の独占を狙う企業と下契約を交わすが、相手はことを進めようとしない。破産に持ち込んで、乗っ取りをするつもり。それを察知して、畑違いの刃傷事件を扱う黒人敏腕弁護士に頼むが、事は契約問題。相手はスーパー黒人弁護士チームで立ち向かってきて、歯が立たない。しかし、最後は、相手の不正を見つけて1億ドルを超える賠償金を得、その大企業を潰してしまう。労働組合をだまし、契約を取ったらキックバックがあるから、葬儀をしたい人、それを斡旋する人も儲かる、と持ち掛けたのだが、葬儀代はふつうの3倍し、キックバックも微々たるもの。黒人地域での訴訟なので、黒人弁護士が必要になるのである。実話らしく、人種問題がからんで、見ごたえのある作品になっている。ジェレミー・アイアンの個性が光る。「エージェント」のプロラグビー選手を思い出す。

 

5 イコライザー(S)

映画館で見たかった。出来がよく、1作目を思い出したが、テーマに合わせて読書する本が変わる設定がなくなっている。ジョン・ウィックのファイナルもイタリアが舞台で、その扱いが似ている。濃い歴史、宗教である。しかし、本作には庶民の生活が描かれていて、彼のいるべき土地とされている。マサチューセッツ州ボストンの一市民が年金をサイバー攻撃で取られ、その奪還でナポリ近くの町まで主人公は出かけ、そこでマフィアと、そしてそれとつながったテロ組織と戦うことになったのである。これで終わり、というのも残念な気がする。CIAの女性が主人公の恩人の娘ということが、最後に明かされる。それもグッド。途中でそうかな、とも思ったが。

 

6  タイムリミット(S)

デンゼル・ワシントンがある町の署長、難病の恋人を救うために、署内に溜めてある金を渡したり、保険の保証人になったりしたが、その恋人が火事で死に、すべての疑惑が彼に集まってくる。どう見ても、状況証拠があり過ぎ、なのに助かるのはワシントンだから、という映画である。

 

7 マーベラス(S)

マギーQ主演、サミュエル・ジャクソン、マイケル・キートンと豪華。マギーはテレビ版NIKITAをやったらしい。ジャッキーチェン門下、ベトナムアイルランドの混血で、日本で育っている。なかなかのアクションである。マイケル・キートンが悪側の用心棒だが、渋くていい。マギーがいかに殺し屋になったのか篇(サミュエルが師匠)なので、次は独立活躍篇を期待したい。

 

8   ロードハウス(S)

本当にアメリカの格闘映画は、「ジョン・ウイック」以来様変わりした。拳銃を使わず、マーシャルアーツだけで戦う。ギレンホールが肉体派の格闘者となって、悪者に支配された村を救う。主人公が言うがごとく、これは西部劇である。悪党の武闘派が強くて、最後は死闘の様相を呈する。途中、どういうわけだか、二人の戦いのときに、ギレンホールが抜け出してしまう。これは何のインターミッションだったのか。89年の同題の映画のリメイクらしい。

 

オッペンハイマー(T)

久しぶりの映画館である。この種の映画はなぜこんなにスピーディにものごを詰め込んで展開させるのだろう。たいていの偉人ものはそうなっている。よく人物像が分からないうちに話が進み、この映画でも査問委員会のようなものと、博士の上司に当たる人物の試問委員会の二つが進行し、その間にロスアラモスでの原爆開発の話が押し込まれるので、何が何だか分からない。結局、科学者は作るだけ作って、使用責任は政治家にある、というだけの映画ではないか。トルーマン自身もそう言っている。