2007-01-01から1年間の記事一覧

初めての川島雄三

*煮え切らない男 これからおずおずと川島雄三の映画について思いついたことを書き記していこう。まだ数作しか見ていないので、何を言おうにも根拠がなさ過ぎるが、それでも自分用のメモとして残しておきたいと思う。 昨年の秋に京橋のフィルムセンターで川…

好きな日本映画

*あえて10本 「アステアとジンジャー」の項が思いのほか長くなった。気分転換もかねて和ものでいこうと思う。題して「好きな日本映画」。ベストテンと名乗るほどの蓄積もないので、思いつくままに10本ほど好みの映画を挙げていこう。いまさら小津や溝口でもない…

アステアとロジャース

*アステア・ジンジャー物、総点検 版権切れの特価DVDには意外なほどミュージカル物が多い。「雨に唄えば」「巴里のアメリカ人」「ショウ・ボート」「イースター・パレード」などは、その種のものを買って見ている。 どういうわけか、ぼくがミュージカルを追いかけ…

ミュージカル初入門

*音楽物というジャンル 去年「プロデューサーズ」というミュージカルが封切られた。さほど評判にならなかったが、ぼくは十分に堪能した。ミュージカル・コメディという分野があるということを初めて知った。小ネタの連続で、大笑いをしてしまった。 ところが…

監督という仕事

*野田高悟、橋本忍 高橋治の「絢爛たる影絵」、そして橋本忍「複眼の映像」、この2つの著作に触発されて、簡単に監督の仕事って何か、ということについて考えてみたい。 どちらもすこぶる付きの面白い本で、小津と黒澤という二大天皇の創作の秘密に肉薄したス…

リアルということ

*新しいリアル 溝口健二の「浪速悲歌(なにわエレジー)」を見た。1936年の作品である(翌年、「祇園の姉妹」を撮っている)。DVD解説は新藤兼人がやっている。溝口の弟子で、「ある監督の生涯」で溝口の軌跡を関係者の証言で追っている。その新藤が、「浪速悲歌」…

今村昌平、カッコ付きリアリズム

*スコセッシと今村 NHKのETV特集「今村昌平に捧ぐ―スコセッシが語る映画哲学」の録画を友達が送ってくれた。スコセッシはNY大学の映像科に在籍していたときに、「にっぽん昆虫記」に接したという。爾来ファンであり続け、後年カンヌで会った折に、たま…

I can’t stop loving them.―愛する洋画10作

*陳腐なラインアップ これから自分の好きな映画を挙げていこう、と思う。でも、好きな映画って? なぜ自分は茶碗蒸しや納豆が好きなのかと考えることに意味がないのと同じように、あまり生産的なことではなさそうだ。自分の女の好みを力説しても、「ああ、そ…

        二重性の震え―俳優ノートン覚え書き

*役者を論じる ある一人の俳優のことを語りたい。個性派の役者というのは、たくさんいる。しかし、気になる俳優というのは、そういるものではない。異性の俳優であれば、憧れで見続けることも可能だが、同性となると、特殊な趣味でもないかぎり難しい。 つ…

        不思議な監督─ガス・ヴァン・サント

*冴えないパッケージ、すごい中身 ロシア映画に「父帰る」というのがある。DVDのパッケージには「シックス・センス」のオスメント君のような少年が写っている。ぼくはてっきりオスメント君の映画だと思っていて、友人に勧められても、オスメント君の映画ではね……

       宗教・不能・母─マーチン・スコセッシ小論

*mother & religion スコセッシは映画ばかりかTV番組を製作したり、実に多作な監督だ。役者としての顔もある。確か若きころスダンダップ・コメディアンだったはずである。 30本近く映画作品があるが、初めての長編が「誰がドアをノックする」で、1967年の作…

「受け」の人―森繁久弥

*「夫婦善哉」の絶妙な味わい 渥美清は森繁久弥を目指していたという。コメディアン出身でシリアスもできる役者の頂点といえば、誰しも森繁に指を屈するだろう。渥美は浅草の舞台でも、ちょっと出てはほかの芸人のお株を奪うような攻めの演技の人だったらしい…

なぜ夫は妻を殺したがるのか?―小コーエン論

*名作「ファーゴ」 コーエン兄弟の映画を立て続けに見たことがあった。「バートンフィンク」(91)「ファーゴ」(96)にやられたからである。「ブラッド・シンプル」(84)「赤ちゃん泥棒」(87)「リック・リボウスキー」(98)「オーブラザー」(00)「バーバー」(01)「レディ・キラ…

猥雑、そして静謐―成瀬巳喜男讃

*明るい静謐さ 成瀬作品は90本近くある。黒澤、溝口、小津のあとに海外で評価が高まった監督ということになる。小津調の作品から抜け出し「芸道もの」と言われる分野で個性を出し、戦後は低迷期が続き、51年に「めし」、53年に「浮雲」を撮って復活を遂げた――とい…

おお! レオン!

*リュック・ベッソンの傑作 リュック・ベッソンの映画はけっこう見ているほうかもしれない。といっても、監督作品は意外と少なく、「ジャンヌ・ダルク」を抜かして「グランブルー」「レオン」「フィフスエレメント」「アンジェラ」、製作・脚本では「ニキータ」「ヤマカ…

ひとの善意を試験管に入れて―――ラース・フォン・トリア

*「ドッグヴィル」の衝撃 「ドッグヴィル」をなぜ見たのか、判然としない。新聞評を読んだのか、広告を見たのだったか。あるいはニコール・キッドマンの映画を何となく気になって見ていたので、そのせいで関心がいったのだったか(小林信彦の新刊「映画が目にし…

 「死」から見たアメリカ    ―サム・メンデスの世界

*What's American beauty? 久しぶりにサム・メンデス「アメリカン・ビューティ」を見た。格安950円でソフトが買えたからだ。ほかに「MI:Ⅰ,Ⅱ」の2本を買った。北海道美唄市のイエローグローブというホームセンターでワゴン売りされていた。 サム・メンデス作品…